先日参加することができた豊田市での五日市剛先生の講演会のなかで、五日市先生が「いのちをいただく」という絵本の紹介をしてくださいました。
以下の内容は、「いのちをいただく」の本を元にされたみやざき中央新聞の編集長の水谷謹人さんの社説だそうです。(この講演をキッカケに私もみやざき中央新聞を購読させていただくことができました。毎週毎週 この新聞が届くのを楽しみにしています。感謝です!)
<みやざき中央新聞より>
「心を込めて『いただきます』『ごちそうさま』を」
その絵本の帯に、一人の名も無い主婦のメッセージが書かれていた。
「朗読を聴いて、うちのムスメが食事を残さなくなりました」
絵本に食肉加工センターの「坂本さん」という人が登場する。
実在の人物である。
坂本さんの職場では、毎日毎日たくさんの牛が殺され、
その肉が市場に卸されている。
牛を殺すとき、牛と目が合う。
そのたびに坂本さんは、「いつかこの仕事をやめよう」と思っていた。
ある日の夕方、牛を荷台に乗せた1台のトラックがやってきた。
「明日の牛か...」と坂本さんは思った。
しかし、いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。
不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、牛のお腹をさすりながら何か話しかけている。
その声が聞えてきた。
「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ...」
坂本さんは思った。
「見なきゃよかった」
女の子のおじいちゃんが坂本さんに頭を下げた。
「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。
だけん、ずっとうちに置いとくつくもりでした。
ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。
明日はよろしくお願いします...」
「もうできん。この仕事はやめよう」
と思った坂本さん、明日の仕事を休むことにした。
家に帰ってから、そのことを小学生の息子のしのぶ君に話した。
しのぶ君はじっと聞いていた。
一緒にお風呂に入ったとき、しのぶ君は父親に言った。
「やっぱりお父さんがしてやってよ。
心の無か人がしたら牛が苦しむけん」
しかし坂本さんは休むと決めていた。
翌日、学校に行く前に、しのぶ君はもう一度言った。
「お父さん、今日は行かないけんよ!(行かないといけないよ)」
坂本さんの心が揺れた。
そしてしぶしぶ仕事場へと車を走らせた。
牛舎に入った。坂本さんを見ると、
他の牛とおなじようにみいちゃんも角を下げて威嚇するポーズをとった。
「みいちゃん、ごめんよう。
みいちゃんが肉にならんとみんなが困るけん。ごめんよう」
と言うと、みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきた。
殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。
坂本さんが、「じっとしとけよ、じっとしとけよ」と言うと、
みいちゃんは動かなくなった。
次の瞬間、みいちゃんの目から大きな涙がこぼれ落ちた。
牛の涙を坂本さんは初めて見た。
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その小学校(熊本県)では、
助産師として日々キラキラと輝く命の誕生の瞬間に立ち会っている内田美智子さん(福岡県行橋市)と、
酪農家が心を込めて育てた牛を毎日解体している坂本さんのお2人をお招きして、「いのち」のお話を聴くという授業をしたのだった。
その絵本は、坂本さんの話を聴いて感動した内田さんが、
坂本さんにお願いして出版させてもらったのだそうだ。
その「いのちをいただく」(西日本新聞社)のあとがきに、
内田さんはこう書いている。
「私達は奪われた命の意味も考えず、毎日肉を食べています。
自分で直接手を汚すこともなく、
坂本さんのような方々の悲しみも苦しみも知らず、
肉を食べています。
『いただきます』『ごちそうさま』
を言わずにご飯を食べることは私たちには許されないことです。
感謝しないで食べるなんて許されないことです。
食べ残すなんてもってのほかです...」
考えてみたら、冷蔵庫って食べ物を腐らせないためにあるのに、
その冷蔵庫の中でいろんなものが腐ってはいないだろうか。
残さないで食べ切ることがどうしてこんなに難しいのか、
特に宴会やパーティーで。
坂本さんも内田さんも、ステキな人なんだろうけど、
このお2人を呼んだ小学校も
ステキな学校だなぁと思う。
今日いただくいのちに…合掌。
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